(公社)群馬県鍼灸師会 第二回学術講習会レポート 「北辰の医学を求めて―北辰会方式の理論と実技―」竹下有@育英メディカル専門学校

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2024年3月10日(日)、群馬県前橋市にある育英メディカル専門学校にて、(公社)群馬県鍼灸師会主催の第二回学術講習会が開催されました。今回私、樫部智美は、北辰会学術副部長の竹下有先生の助手として参加させて頂きましたので、ここにご報告致します。


↑育英メディカル専門学校校舎
https://www.judo-ch.jp/seifukusisrch/school/info/did/00000000000000105965/ より引用)

今回は(公社)群馬県鍼灸師会、現会長である田中一行先生からご依頼をいただき、開催される運びとなった講演会ですが、竹下先生としても、特に思い入れの強い講演会だったそうです。


↑左から竹下有先生、(公社)群馬県鍼灸師会会長の田中一行先生

群馬県といえば、そう!竹下先生とは非常に関係の深い地ですよね。というのも、先生のお生まれは、お父様の故郷である静岡県伊東市ということですが、物心つかないうちにお母様の故郷である群馬県前橋市に移り、19歳までいらっしゃった地が、今回の会場のある、群馬県前橋市なのだそうです。

 

先生はその後、19歳で鍼灸医を目指して上京されたとのことですが、当時、先生の周りでは、群馬から東京に何かを目指して出て行っても、なかなか上手くいった先輩は少なかったとのことで、ご自身は初志貫徹で結果を出して、地元群馬へ「必ず何かを成し遂げてから」帰って来たい、という思いを常に持っていらっしゃったとのことです。

 

そういう意味でも、群馬を出られてから24年の歳月を経て、地元の群馬にて、鍼灸の講演を行うということは、非常に感慨深いものがあるということでした。さらに、北辰会に所属されている先生であれば、「群馬」と聞いて思い出される方が多いと思われるトピックがありますよね!

 

そう!初代支部長、中村順一先生(1948-1997)です。中村先生は、(公社)群馬県鍼灸師会でも青年部長、学術部長を務められ、全日本鍼灸学会の群馬県地方会の会長でありながら、その周辺の先生方とともに「北辰会関東支部」を創られた先生です。その旗揚げメンバーの中には、竹下先生のお父様で、(一社)北辰会名誉会員である竹下謙先生もいらっしゃいます。

 

北辰会関東支部は、竹下先生の鍼灸師人生の運命を変えた研究会とご自身でも仰っており、特に北辰会関東支部資料集『順雪①』の中村先生の闘病・治療記録は、北辰会入会の決め手となった書籍とのことです。中村先生無しでは、関東支部も、竹下先生の今も無かったかもしれない、超重要人物であることが分かります。

 

北辰会関東支部の旗揚げは1996年(平成8年)5月であり、その翌年の1997年(平成9年)1月に、中村先生は惜しくも逝去されています。今回、それから約30年の時を経て、群馬にて、北辰会について講演できるということは、竹下先生としても非常に嬉しいことだと仰っていました。

 

私も中村先生のお話をお聞きする度に、中村先生の北辰会や鍼灸医学に対する迸るような強い情熱が感じられ、そのような先生が人生を掛けて立ち上げ、残して下さった、北辰会関東支部で勉強させて頂けることの有難みを身に染みて感じております。

 

今回の講演テーマは、「北辰の医学を求めて ―北辰会方式の概論と実技―」であり、今年の冬季研修会(順雪会)での竹下先生による告知の際も、「天に届くように、気合いを入れて喋ってこようと思います!!」と熱く語られていたことが印象的でした。


↑↑北辰会の「北辰」の意味は北極星です。北極星のように、ブレない存在でありたいとの思いから、藤本蓮風会長によって、この名前は付けられました。

 


↑「本講演を、中村順一先生に捧ぐ」

 

講演の流れは、前半の90分は座学、残りの110分は実技デモの計200分間に及ぶ、豪華なスケジュールでした。

 

座学での講義内容は下記の通り。

 

1.「北辰会」とは?

2.竹下はなぜ「北辰会方式」をやっている?

3.体表観察各論

4.診断、選穴論

5.北辰会方式で主に使用する鍼について

 

今回は、(公社)群馬県鍼灸師会会員の先生方はもちろん、会員の育英メディカル専門学校の学生さんを中心に、美容関係、介護関係、スポーツ関係、東洋医学的治療、局所治療などなど…様々な分野、年齢の先生方が聴講されていました。

 

上記の5つのトピックを軸に、非常に分かりやすく噛み砕いて説明されており、時には笑いを交えながら、受講生を飽きさせない、楽しい講義でした。北辰会についての講義を聴くのが初めてという方でも、「面白い!」「興味深い!」と思っていただけたのではないかと思いますし、北辰会会員が聴いても新しい学びがあったり、知識の再確認が出来たりする構成となっていました。

はじめに、初代支部長、中村順一先生についてや、北辰会関東支部の歴史についての説明があり、

 

1.「北辰会」とは? 

 

2.竹下はなぜ「北辰会方式」をやっている?

 

では、北辰会の特長や、北辰会と竹下先生の関係を、竹下先生のお父様や藤本蓮風会長とのエピソードを交えて語られました。

 

続いて

 

3.体表観察各論

 

では北辰会の各種診察法(体表観察術)の解説を、

 

4.診断・選穴論

 

では、各種弁証法から、選穴理論、病因病理チャート図を用いた症例解説まで、盛り沢山の内容を、平易な言葉で丁寧に分かりやすくお話下さり、受講者の皆さんの頭の中にもスッと入り、理解が深まったのではないかと思います。

5.北辰会方式で主に使用する鍼

 

では、北辰会方式の代表的な三種の鍼術 (毫鍼術、打鍼術、古代鍼術)と灸術が紹介され、北辰会ならではの術式、道具のお話に皆さんの興味深そうな眼差しが印象的でした。

 

座学終了後は一旦休憩を挟み、後半は実技デモの時間です♪

 

実技デモでは、清明院のスタッフや北辰会の会員ではなく、当日、会場の中から鍼を受けたいという方(しかも北辰会方式の治療を初めて受けるという方)に手を挙げてもらい、治療するという、なかなか痺れるモデル患者の選出形式で行われました。

 

【実技デモ①】

主訴:腰椎椎間板ヘルニアによる長時間座位後の腰下肢痛、痺れ 40代男性

 

まず簡単に問診を行い、体表観察に入ります。趣味でダンスをされているとのことで、体格が良い方でしたが、約1年前から、お仕事で長時間座位で移動をすると腰下肢痛が出るようになっているとのことでした。処置は、左天枢穴に奇経鍼3番を使用して刺鍼。上実下虚で虚実が錯雑したケースを、普段から中医学用語にあまり触れていない方でも分かりやすい言葉で解説されており、こちらのモデル患者さんが東洋医学的にどのような状態なのかイメージしやすかったのではないかと思います。

 

今回、初めて北辰会方式の診察法を見るという方も少なくなかった為、それぞれの診察法(脈診、舌診、顔面気色診、眼診、経穴診、尺膚診、腹診、背候診、空間診など)のポイントや意義、目立つ所見を一つ一つ噛み砕いて説明しながら体表観察をし、選穴、刺鍼、抜鍼、養生指導まで一連の流れを見せて頂き、所見を全て記入した体表観察カルテと、モデル患者さんに即した養生指導の用紙を、受講者の皆さんに配布しました。

 

前半の座学で学んだ内容に加えて、

「この所見から何が考えられるのか」

「なぜそう考えたのか、そうしたのか」

という丁寧な実況解説付きで、目の前で実演していただけた為、理論と実践が結びつきやすい状態で学んで頂けたことと思います。

 


☝こちらは背候診の様子。


↑↑下背部で左右差が最も顕著であった腎兪穴について、分かりやすく説明中。カメラで映し出しながら、虚実の違いによる見た目、指の入り具合の違いを手指感覚だけでなく、視覚的に共有されたことで、受講者の皆さんも「本当だ~!」「すごく違う!」などと頷かれていました

↑↑こちらは、刺鍼の様子。

体表観察前は、左寸口と左関上に硬い脈が触れているとのことでしたが、体表観察が終わった時点で、だいぶ脈が緩んできて、硬い脈は左関上のみとなっていました。鍼をする事だけが治療ではなく、望診、聞診、問診、そして切診の体表観察の時点から治療が始まっており、丁寧に正しく行えていれば、刺鍼前の時点ですでに良化の反応がみられるといった説明があり、「そうなのか~」と実感を持った感嘆の声が上がっていました。

抜鍼後には、治療前に特に目立っていた、上背部のきつい熱感が取れ、上背部の穴所が緩み、腎兪の左右差も調ってきていることなどを、一つ一つ丁寧に解説されていました。

また治療前、SLR時に左下肢に重い感じが出るとのことでしたが、治療後は重さが消失して、下肢が挙げやすくなっており、ご本人が非常に驚かれていました。また、腰部の可動域検査も可動域制限(顕著だったのは左回旋>左側屈)が消失し、全後屈の可動域もさらに良化したことで、「わぁ~すごい!」とご本人、会場から共に驚きと感動の声が上がりました

その後は、2名のモデル患者さんをそれぞれ打鍼、古代鍼にて、普段の臨床に近いスピードに上げて、次々に簡単な問診、体表観察、鍼術までを披露されました。竹下先生の細やかで丁寧な体表観察、選穴から術式を決めるまでのスピーディーさ、的確で鮮やかな手技に会場にいた全員が釘付けになっていました。

↑↑火曳きの鍼の説明。

↑↑打鍼の様子。

 

打鍼の実技デモでは、左手指の痺れを主訴とした男性のモデルの方で、主訴だけでなく、全身状態をも改善できるよう、関元に火曳きの鍼→右脾募の散ずる鍼→左天枢に相曳きの鍼→関元火曳きの鍼を施されました。腹部は全身の縮図であり、十二経絡全てが流注する腹部全体を、ある意味「一つのツボ(=一穴)」と認識して治療にあたっている為、多臓腑にまたがる病証や、虚実夾雑証に、また、刺さない術式であるため、敏感、過敏な小児や、正気の弱った高齢者に対して、打鍼は特に有用であるとの解説もされました。

 

(※竹下注:本症例では翌々日に、治療後、いい状態が継続したものの、若干無理をしたら症状が少しぶり返した、との報告を受けています。是非今後も治療を継続するように、とお伝えしました。)

 

因みにこの時に、火曳きの鍼の際に使用された純金製の打鍼は、清明院を開業した15年ほど前にお父様より譲り受けたものであるという説明があり、故郷である群馬の地で、お父様に見守られながら(当日、座学から参加されていました)、お父様に頂いた鍼で、北辰会方式の治療を見せるお姿に、誇りと感慨深さが滲み出ていらっしゃるようでした。

 


☝続いてこちらは古代鍼を披露。

 

最後は古代鍼を披露。若い女性のモデル患者の方で、主訴は右頚肩部の痺れということで、問診をしつつ、体表観察に入りました。脈診の時点で、竹下先生から「何か婦人科に問題はありませんか?」とモデル患者さんに質問されたところ、婦人科に癌の既往があるとのことでした。脈診でそんなことも分かってしまうのかと、モデル患者さんご本人、会場から驚きの声が上がっていました。

 

(竹下注:これは、脈診で癌の存在が分かるという訳ではなく、脈診所見から、婦人科(下焦)に大きな問題があることが示唆されていた、ということです。)

 

治療は背部督脈上の筋縮穴に古代鍼(プラチナ製)で瀉法を施されました。古代鍼による手技を初めて見る方も多く、会場中が静かになって非常に集中した雰囲気となり、手技のあとには「お~!」と感嘆の声が上がりました。

 

竹下先生からは、長年北辰会方式で治療を行っていると、問診もポイントを押さえて最小限に行えるようになり、普段は初診時に問診時間を90分取っていたとしても、再診時には伸縮自在となり、慣れればこのように、今ある症状や、簡単な既往歴、体表観察からでも、患者さんのおおよその病態把握をすることも出来るようになる、との説明がありました。

 

これは、多面的観察に重きを置く北辰会方式の長所であり、頭の中で病因病理を組み立てて、全体像を理解した状態で治療を進められるので安心なんです、と話されており、受講者の皆さんも納得の表情で耳を傾けていました。

 

この度、講演会での助手は初めてであり、至らない点もあったかとは思いますが、どの受講生よりも近くで拝見させて頂き、多くのことを勉強させて頂く機会を頂けましたこと、深く感謝申し上げます。

北辰会についての講義を初めて聴いたという方が多数の状況であった為、「そういう人たちにも、北辰会を良く知って、帰ってもらいたいと思います。」という竹下先生のお言葉でスタートした講演でしたが、先生のお言葉通り、受講者の皆さんに易しく分かりやすく北辰会を実感を持って、知っていただけた有意義な講演であったと思います。

 

(文責 北辰会スタッフ会員 樫部智美)

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